
企業の現場では今、管理職の役割がますます重くなっています。
成果を出すことに加え、多様な世代・価値観を持つ部下との関係構築、時代に即したマネジメント手法の模索など、課題は尽きません。
しかしその一方で、「社内に相談できる相手がいない」「悩みを口にできる場がない」という“孤独”を抱える管理職も少なくありません。
そんな状況に注目が集まっているのが、「社外メンター」の存在です。
メンターとは、経験豊富な助言者のこと。
従来は社内の先輩が後輩を指導する形が主流でしたが、今は企業の垣根を越えて、社外の専門家や経営者が“第三者的な立場”で管理職を支える取り組みが広がっています。
医薬品大手のエーザイは、希望する管理職に現役のコンサルタントをメンターとしてつけています。
若手との接し方や年上部下との関係に悩んでいた管理職が、「相手を尊重する気持ちをまず前面に出して」といった助言を受け、徐々に信頼関係を築くことができたそうです。
実際、社外メンターの支援を受けた人の約7割が「昇進」「モチベーション向上」などポジティブな変化を実感したというデータもあります。
社外メンターが注目される背景には、時代の変化があります。
リモートワークの普及、個人の価値観の多様化、ワークライフバランス重視の流れなど、かつての“当たり前”が通用しにくくなっているのが現実です。
こうした中で、管理職自身が「従来のやり方だけでは限界がある」と感じ始めています。
さらに、現代の管理職には「新規事業」「経営計画策定」など、専門性の高い業務が求められる場面も多く、社内リソースだけでは対応が難しい場合も。
そんな時、社外メンターは“実務アドバイザー”としても大きな価値を発揮します。
実践的な知見を直接吸収できる機会は、企業にとっても管理職本人にとっても非常に有益です。
社外メンターは、人材採用とは異なる“知見のシェア”の仕組みであり、「人を雇うのではなく、経験を借りる」柔軟な選択肢です。
経営者や管理職にこそ、自身の壁打ち役として、こうした外部の視点を持つことが求められる時代なのではないでしょうか。
リーダーが孤独に抱え込まず、外部の知恵と支援を味方につけること。
それが、これからの組織の成長と変革のカギになるのかもしれません。